コラム

施工し、3年程経ち、庭が落ち着いてきたころかとお伺いし、施工写真を撮影させていただきました。工事で植えた植物は成長し、施主様がご自分で植えた植物も沢山混じって、住宅街のオアシスのような風景をつくっておりました。真夏でしたが木陰は涼しい!

新築外構案件で、最初にお会いした時まず「もりもりした庭にしたい」と(なんともイメージの湧く言葉ですよね(笑))。その時すごく嬉しい気持ちになったのを覚えています。なぜなら、やはり「植物が多いと手入れがしんどそう」とか、「大きくなる木は将来大変そう」というご心配の声を最初によくお聞きするからです。緑は好きだけど、管理が大変なのは嫌だな。分かります。私もそうです(笑)。だけど施主様が、とにかく緑がたくさん欲しい!と言ってくださると、本当に心の励みになります。

では実際、緑が多いと本当に大変なのか?これについては「人による」と思っています。例えば、道の脇に生えている雑草を見てどう感じるか。管理されていないと感じるのか、気にならないか、人工的なものの中に少しでも緑があるのは良いなと思うか、更には、アスファルトの隙間でも成長して凄いな!と、愛情さえ感じる方も居るでしょう。庭でも同じことが言えると思うのです。あとは「手入れの度合いの許容具合(作業量なのか金銭的になのか)」と、「緑が好き」の天秤で、丁度良いところは見つかります。

植威では、よくローメンテナンスな庭を推奨しています。しかしここでのそれは、決して雑草が生えないようにすることを推奨しているのではありません。多少雑草が生えても、落ち葉を掃かなくても、しょっちゅう木を剪定しなくてもいい感じを長く保てる、そんな庭が結果、ローメンテナンスだなと思うのです。

例えば、アスファルトの道路やカチッと四角に打たれた土間コンに、落ち葉が溜まって腐ってきたら「汚い」と感じますが、土の上に落ち葉が溜まっていても、土に還っていきそうなのであまり「汚い」とは感じないと思います。また、雑草についても、背の高いのが群生して人が入れなくなるほどになると大変なので、葉っぱの大きな宿根草などを沢山植えて雑草除けにしたりします。クローバーなども小さいながら少しは雑草除けの役目をしてくれますし、踏圧に強いので上を歩くことも出来ます。また、リビングからのテラスなどしょっちゅう使うところだけ雑草が生えなくしておくとかなりストレスフリーです。植える木は庭のスペースや境界からの距離と樹種に気をつけて植えておくと自然樹形でのびのびと育てていけます。もりもりしたい庭ではこれらの知恵を詰め込みながら数年後を見据えつつのご提案をしました。

もりもりしたい庭
▲ 住宅街でオアシスのような風景
もりもりしたい庭

ウッドデッキは斜め形状にしています。直線だと道路に平行になり、お向かいの家に気が向いてしまうのですが斜めにすると気持ち外れるのと、デッキの大きさを確保しつつ庭に奥行をつくる事が出来ます(大型ビニールプールが設置されていました!)。庭に少しでも奥行きあると、木を二重、三重に植えることができ、広くなくても豊かな空間をつくる事ができます。また、ウッドデッキの手摺には数種類の蔓植物を絡めており、かなり良い目隠しとなってくれています。生垣より管理が楽で、薄い幅で目隠しできるのも利点です。

もりもりしたい庭
もりもりしたい庭
▲ デッキを斜めにすることでデッキの大きさを確保しつつ庭に広がりと奥行きを設けた。

他にもこの庭の特徴は、私たちでは珍しく?かなり「洋」な雰囲気にしています。家の雰囲気に合わしたのですが、あまり「〇〇風」のデザインは好きではないので、少し渋めを意識しつつでした。何を持って「洋」な雰囲気をつくったのかというと、実は植栽の種類などは至っていつもとそんなに変わらないと言いますか、日本の気候風土に合う在来種を主に使っています。石積もアクセントにはなっていますが、日本のもので積み方もヨーロッパ風というわけではありません(ちなみに瑠璃渓という今ではかなり希少な石で、ご縁があり手に入ったものです)。「洋」の雰囲気を決めたのは西洋鍛冶仕事です。

階段手摺、扉、ポスト。これらは鍛冶屋さんとデザインを相談しつつ作って貰ったのですが、当然ですが既製品とは全く違います。手摺の部材を継ぐ部分、扉の丁番、細かいところですがよく見ると機能とデザインが兼ねられ、本当に美しい。テクスチャーは、鉄をたたいていますので硬いけど有機的。人の手の熱のようなものを感じる気がします。「鉄・石・木」これらは本当に相性が良くて、庭の良いアクセントになり、雰囲気まで作り出せてしまうのです。もし、これが「洋」デザインでなくモダンで直線的なデザインなら、随分と印象は違うでしょう。ほんの数アイテムなのに凄い効果です。

もりもりしたい庭
▲ ポスト、階段手摺、扉金物等製作:kaji-fufu
もりもりしたい庭

メインの木はカツラやアズキナシです。かなり大木になる木ですが株立ちなので、大きくなりすぎる前に株をすくなどして管理がしやすいようにしています。個人的には作られ過ぎた綺麗な株立ちより、少しバランスを崩した樹形が面白いと感じるので、そういう経年変化の楽しみ方はすごく楽しいと思います。施主様がお持ちだったオリーブも植えましたが大木になります。日本の庭木で使われる在来種と違い、樹形が暴れやすいです。庭で大きくなりすぎてどうして良いか分からなくなって切られてしまう事も多い木なイメージがありますが、境界線から距離を大きくとって、時々剪定で整えれば大きくない庭でも楽しめます。「洋」の雰囲気にも合いますし、幹がもっと太くなってくればワイルド感が出てきてすごく面白いと思います。

もりもりしたい庭、植物が多い分、経年変化が大きくすごく楽しい庭になったんじゃないでしょうか。施主様の想いが本当に嬉しい庭づくりでした。

緑は多ければいい!とは言いませんが、意外と心配するほど、庭って大変なものにはならないと思っています。「許容具合」と「好き」を天秤にかけてみて傾きがないか、少しでも「好き」に傾くようなら、思い切って多めの緑の中に身を置いてみるもの良いかもしれません。

もりもりしたい庭
▲ もりもりしたい庭、竣工後3年目 2022年夏撮影:二村写真事務所