植物は好きだが手間がかかりそうだからたくさんは植えられない。そのようなイメージを持たれている事が多い「庭」です。確かに植物は生き物なので成長するし、植えたら終わりではなく、むしろそれがスタートです。しかし手入れが大変だからと、好きな植物を諦めてしまうのはとても勿体無い事のように感じます。なぜなら身近な植物は大きな「癒し」や「愉しみ」を与えてくれるからです。
とはいえ、頻繁に庭師さんに来てもらうのは費用がかかるし、自分ですべてを管理するのも大変…。私自身、日々仕事に家事に子育てにと追われ、決してマメな性格ではありません。庭の掃除をこまめに行うなんて、とても負担です。
それでも、庭を持って15年経った今、とてもストレスフリーな状態、つまり、少ない負担で庭のメリットを存分に享受できていると感じています。今回は、なぜその状態が保てているのか——ローメンテナンスにするための工夫や、役に立つ考え方をご紹介します。
1. よく使う場所はしっかり防草する
「バーベキューしよう!」と思ったら、まず草刈りから…大変ですね。よく使う場所こそ、雑草が生えない(または生えにくい)ようにしておくと良いです。
ウッドデッキ、石・タイル土間コンなどのテラス、固まる砂、防草シート+砂利など、様々な方法があります。デザインや予算に応じて選んでいくと良いと思います。
2. 木はできるだけ剪定しない
基本的に、木は出来るだけ切らないでのびのび育つ事がローメンテナンスに繋がります。自然樹形が美しくなる木、植える場所に適した樹種を選ぶことがポイントです。
あまり広くない庭や隣地や道路に近いところにはアオダモやナツハゼ、ドウダンツツジ、ヤマコウバシなど成長が比較的ゆっくりな木を。広い場所にはアカシデやコナラ、サルスベリなど、将来大きくなる木や成長が速めな木を植えても良いです。狭いところや境界に近いところにそのような木を植えると頻繁に強剪定をすることになってしまい反発して徒長枝が伸びるので、樹形は崩れるわ費用はかかるわで管理の悪循環に陥ってしまいます。


3. 落ち葉は“そのまま”でいい
落葉樹は秋に、また多くの常緑樹は春に葉を入れ替えるため落葉します。落葉しない木は無くて、木の下には必ず落ち葉が溜まります。花が咲く木があればその花ガラも落ちます。木の下がアスファルトやコンクリ―トだったら、きっとそれらがとても気になるでしょう。しかし、下が土ならどうでしょう。枯葉はいずれ土に還っていくので、汚いという感じはしないのではないでしょうか?落ち葉はマルチングとなり、土となり、栄養となります。庭の中に「自然に任せる部分」をつくる事で、小さな循環が生まれ、ローメンテナンスにもなるのです。

4. 下草を豊かにするほど雑草は生えにくい
豊富な下草類は、雑草除けになります。特にギボウシやツワブキなど葉っぱが大きいものは地面に影をつくるので効果的です。
常緑のもの、紅葉して冬には枯れ春に新芽を出す宿根系、多年草、一年草など。また、花を楽しんだり山菜系やハーブなどの料理に使えるものなど、色々な種類の下草類をミックスして植えておくと雑草を抑えてくれる上、様々な愉しみをもたらしてくれます。
自分で好きなものを買ってきて植えるのも楽しいので、ストレス発散にもおすすめです。

5. “雑草”も強い下草として捉えてみる
精力が強くどこでも生きる「雑草」と呼ばれる草にも、実はすべて名前があります。自身、ゴージャスでデリケートな植物より地味で強いものが好みという事もあり、好きな雑草なら庭に生えていても良いと思っています。個人的にはムスカリとか小判草とかが小さく可愛いので好きです。
嫌われることの多いドクダミなども、他の雑草を抑制してくれたり、毒消しの薬草として使えたりもします。栄養のない痩せた土壌に生え、根を張る過程で土壌を改善していくといわれており、実際、我が家の裏庭にたくさん生えていたドクダミは、土壌が改善されたのか徐々に減っていきました。
自分の合うところで生きて、環境に合わせて変わっていく。つくられ過ぎた植生ではなく、自然発生的な事にある程度身をゆだねるという感覚も、ストレスフリーな庭づくりにおいては大切な気がしています。
6. 庭の「骨格」をしっかり作っておく
雑草があっても「まあ、これはこれで良い感じ」と思えるのは、庭の骨格(プラン)がしっかりしているからです(ここでは、建物との関係は一旦置いておきます)。
テラスなどすぐ使えるエリア、自然の循環エリア、自然樹形の木々の配置とボリューム、景石や土留め石などのデザインアクセント…。こうした構造がしっかりとしていると、少々散らかっていても「良い感じ」で、飽きのこない、自然の移り変わりを楽しむことができる庭になります。

7. まとめ
私たちが考えるローメンテナンスな庭とは、「使いたい時にすぐ使えて、雑草や落ち葉があっても“なんかいい感じ”に見える庭」 です。多少手を抜いても近隣に迷惑がかからなければ、あとは自然の流れに任せて大丈夫。
手をかけすぎなくても、植物は驚くほどたくましく、美しい姿を見せてくれます。うまく育たない植物があっても、風土に合わなければ自然と姿を消すもの。あまり気負わず、ゆるく付き合うことが、庭を続けるコツです。
植物のある暮らしは心を豊かにしてくれます。自然に寄り添い、受け入れ、完璧を目指さずゆるやかに育てていく身近な庭は、暮らしそのものを軽くしてくれる。そんな“ちょうどいい距離感”を見つけながら、自分らしく庭と付き合っていけることこそ、本当のローメンテナンスなのだと思います。















