
「Omishima Space」は、愛媛県今治市にある大三島に位置するコワーキングスペース兼宿泊施設で、移住者や観光客、リモートワーカー、クリエイターなどが利用できる場として提供されています。美しい景色を見ながらサイクリングを楽しめる「しまなみ海道」の通る島の一つで、建築家伊東豊雄氏設計の「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」なんかも有名です。近年は移住者も多く、活気のある島だなと感じています。
オオミシマスペースは現在二か所があり、ひとつはお宿とコワーキングスペース「OMOYA」と「KOYA」,もう一つは一棟貸切りの「HANARE」。どちらも古民家をリノベーションしているので、良い感じに地域性というか、味があります。庭はあえて作り込み過ぎず、バーベキューしたりテントを張ったりいろんな使い方ができるような自由さと(実際の使い方は施設でご確認ください)、管理のシンプルさ、古民家の雰囲気に合うように侘び寂びを感じるような引き算の美しさを意識しています。
最初に造園をしたHANAREは、シンボルツリーと目隠しに数本の常緑樹を植栽しています。シンボルツリーはネムノキです。夏にピンクのふわふわとした可愛い花が咲く落葉高木で、成長がとても速く、樹形は傘のように広がって行きます。大三島は一年を通して暖かい方なので、最初は高さ3m程の苗木でしたが数年でぐんぐん成長し、今では夏場にとても気持ちの良い日陰を作ってくれています。大きな木はとても落ち着いて見えるので古民家との相性が抜群ですし、マメ科の花がエキゾチックな雰囲気をも醸し出します。成長が速くスペースが必要な木なので、あまり庭木として使われないこともあり、少し非日常感を演出できているかもしれません。


アプローチや駐車場の車止めには、元々の和風庭園にあった石や、敷地に転がっていた石を主に使いました。歩きやすくシンプルに、でも少しだけまっすぐじゃなくして、雰囲気がある飛石アプローチを目指しました。


OMOYAとKOYAは、最初の造園から数年後、オーナーの事業拡大に伴い行いました。OMOYAは一棟貸切りのHANAREと違い、個室が数室と共有の居間とダイニングキッチン、シャワールームがある宿です。KOYAはコワーキングスペースとなっており、個人やグループが快適に仕事やミーティングの出来る空間です。L型に建物に囲まれた庭で、使い勝手はHANAREと同じ考え方ですが、こちらは、管理棟でもあるKOYAまで軽トラックが入れるようにしたいという事で、車路の形が胆でした。自由さを感じる芝の庭を邪魔しないように、自然な曲線で芝との馴染みが良い車路にしました。パワーマサファルトという固まる砂を採用しましたが色が砂色なので島の雰囲気とマッチしています。素材は耐久性の高いコンクリートでも良かったのですが、生コン車が入って来られない立地という事と費用的にもマサファルトの方が抑えられるという事、そしてやはり雰囲気を重視し、そうなりました。



瀬戸内はレモンの産地で有名ですが、もちろん大三島にもたくさんのレモンが植わっています。庭にもやはりレモンの木が。フェイジョアも美味しくて手軽に食べられそうなので植えてみました。庭で果物がとれるって素敵ですよね。
入り口にはロゴサインのための木塀を設置し、その後ろに株立ちのサルスベリを。漢字で書くと「百日紅」。夏の間、長く花を咲かせることから庭木としても人気があります。サルスベリは成長が速く大きくなりやすい木で、また、枝を切るとビューンとまっすぐな徒長枝が出てきます。スペースの狭いところや境界に植えると、どうしても剪定が必要になり、毎年同じようなところで切っていると段々とこぶのようになり、そこから徒長枝がびょんびょん伸びて樹形が崩れていきます。切らなければ本来の美しい樹形で育って行く事ができ、ある程度大きくなった後の成長速度はゆっくりです。ぜひ十分スペースがあるところでのびのびと、美しい自然樹形に育てたい木です。

KOYAには半屋外のワーキングスペースがあります。そこから庭を見ると、向こうに山がありそれが借景となり、とても雄大な風景をつくっています。庭はシンプルですが本当に気持ちの良い空間になりました。ぜひ、しまなみ海道、オオミシマスペース、サイクリングや観光はもちろん、ワーケーションやグループ研修などにもおすすめです。
