植威では、出来るだけアルミ既製品などを使わず、経年劣化ではなく経年変化を楽しむことの出来るお庭や外構を提案しています。経年変化で「味」が出てくる素材や、場当たり的ではない考え抜かれた構成で、流行に流されない豊かな風景造りを目指しています。今回は、「塀・柵・フェンス」について書きたいと思います。
しっかりしたCBやRCの塀
目隠し塀として、道路や隣地との境界塀として、日本の街中の住宅地では必要不可欠であることが多い「塀」。どの程度目隠しをしたいか、どのような素材が良いか、建築物とマッチするように、また、予算によってなど、様々な方法が考えられます。
例えば、しっかり目隠しがしたい、隙間なく背を高くしたいという時はCB(コンクリートブロック)積にすることがあります。ただ、高さが1.2mを超える組積の場合は、控え壁をとらないといけません。その場合、上手く植栽などで隠して、控え壁の存在感を小さくするなどの工夫をすると、気にならなくなります。表面がCBそのままだと、グレーから経年で黒くなっていくので、暗い印象になります。モルタルで目地を消して吹き付け塗装や塗りなどすると見た目もスッキリして明るい印象です。目地を消さず白いペンキをラフに塗るだけでも、明るく柔らかな感じになります。塀の前にポイントで植栽をすると、そのラフさが案外いい感じになりますし、経年で汚れは出ますが、ラフな感じでOKであれば、費用も優しめ、何ならDIY塗装も可能です。
▲ ラフな塗装のブロック塀。多少の汚れを味と思えたら有。
CB塀は崩れると非常に危険なので、地震や局地的な暴風にも耐えうるように基礎はしっかりとしたものにしたいです。
RC塀(鉄筋コンクリート)なら、控え壁無しで高めの塀にすることが可能です。基礎と一体となるので、非常に堅牢です。コンクリート打ちっぱなしは味気ない感じと思っておられる方もいらっしゃいますが、植栽があると冷たい感じにはなりません。モダンな建築に良く似合うスッキリした印象になります。
▲ モダン建築に似合うRC塀。建築設計:キアラ建築研究機関
木で作るナチュラルな印象の目隠し塀
木塀は、軽く柔らかな印象になり、通りに面して設置しても、あまり圧迫感を感じません。
隙間のあけ方で、目隠ししつつも柔らかに外を感じる事が出来るので、防犯上もいいですね。
▲ 道行く人々も楽しめる風景にしようと、柔らかく目隠しした例。板の幅に変化をつけてリズミカルに。隙間を大きく取って、植栽が見え隠れする。
▲ 既存のブロック基礎を利用しており背も高いので、内側に控えをとっている。目立たないように細いスチールパイプで造作した。植栽でほとんど存在感は無い。
木を使う場合、「腐る」という事を心配される方も多くいらっしゃいます。その場合は、非常に腐り難い「アイアンウッド」などと呼ばれる南洋材を使うと、塗り直しなどのメンテナンスなく長年安心です。ただ、イニシャルコストはかかります。アルミ素材を検討することもありますが、アルミでも見た目の良いものは結構高価ですので、同じくらいであれば経年変化が楽しめるアイアンウッドをお勧めしています。モダンな建物の場合は、スッキリとアルミ素材がよく似合う場合もあります。
▲ アルミ横格子。アルミ素材は思い切りスッキリ使うと良い。建築設計:アリアナ建築設計事務所
アイアンウッドまでしなくてもレッドシダーやスギ、ヒノキでもう少しお手軽に作る場合も、骨組みだけアイアンウッドにしておくという事も出来ます。
スギヒノキなどの針葉樹はキシラデコールなどのオイルステイン系の外部塗料や、浸透系の保護材を塗ります。よく使うものでは、一回塗ったら塗り直し不要(カナダでは60年の実績がある)の浸透系保護「エコウッドトリートメント」というものがあります。それはオイル系の塗料と全く違い、渋く変化していきますので、好き嫌いはあると思いますが、この渋さが好みであれば、塗り直しが要らない、塗るのがオイル系に比べて非常に手軽な事などが大きなメリットである保護剤です。
▲ ウエスタンシダーにエコウッドトリートメント塗装。CB積の部分は、白いアクリルペンキを塗っただけ。
植物で作るフェンス
生垣など、植栽で「塀」を作る場合は、最初の数年、覆い茂るまでは手がかかりませんが、ある程度成長してからは出来れば年に一回程度、剪定を行った方がいいでしょう。何年も放置しすぎて、道や隣地に大きく越境してしまうと、強く刈り込まなくてはいけなくなり、表面に葉が無い状態になってしまったり、かなりの労力や費用がかかったりします。
アルミフェンスや簡単な木塀にモッコウバラなど、蔓系の植物を誘引する方法もあります。伸びてきたら誘引したり、伸びすぎたら切ったり、時々こまめなお手入れは必要ですが、生垣よりご自分でも管理しやすいとは思います。蔓バラなど花を楽しめるものが多いのも特徴で、洋風やナチュラルな雰囲気のお家やお庭によく似合います。
▲ 柵に誘引したモッコウバラ。道行く人の目を楽しませている。
風景になじむ防獣フェンス
普通の街中ではあまりないと思いますが、私共の本拠地でありますここ比叡平では、獣害予防でイノシシ除けや鹿除けの柵の需要があります。
簡単なものでは、木杭を立ててネットを張るという方法がありますが、通りに面している場合はやはり風景や町並みに配慮したいですし、お庭とマッチするものにもしたいです。
費用を押さえつつ見た目にもよく、鹿が入ってこないように。つまり、背は高く風を受けにくい軽い構造で、基礎も簡単になるように、と作ったのが、下の写真のような形状の柵になります。すっきりシンプルに最低限ですが、十分役目をはたしてくれています。
鹿除けじゃなくても、特に目隠しを重視しない木塀の時は、隙間を大きくとって、風をあまり受けない作りにすることで、基礎を簡略化し、ローコストにすることができます。
ちなみにイノシシの場合は、地中を掘って侵入してきますので、地中にメッシュフェンスを折り曲げて仕込んでおきます。
▲ 鹿除けの木塀。鹿除けの用途以外にもソフトな目隠し、風景造りにも一役買っています。
町並みに大きく貢献する外構
「敷地」というのは、もちろん、その持ち主のものであります。でも、「風景」は、道行く人、みんなが楽しめたらいいなと思っています。
そして通りに面して塀やフェンスを設置する場合、それは「風景」「町並み」を造る要素として、大きな役割を持つことになると思うのです。
外に対して素っ気なかったり威圧感のあるものを作るのではなく、遊びや、気づかいを感じる塀が建っていれば、そんなお家が増えて行けば、街の雰囲気が良くなっていくと思います。
ご自分の庭や外構が町並みに貢献していると思うと、ちょっと楽しくなりませんか?